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腹芸
H25×W22×D20 cm
リヒャルト・シュトラウス(1864〜1949)は終着駅のような作曲家だ。
19世紀の只中にあって、100年も前のモーツァルトを理想とするバリバリ古典趣味な父親のもとで基礎を学び、10代後半には才能を認められて大物指揮者のアシスタントとなる。
そこで業界の最先端を知り即座に吸収。とにかく器用なシュトラウスは、絢爛豪華な作品を連発。危なげなく成功を納め、気がつけばドイツ音楽の重鎮となっていた。
物質的豊かさと技術革新の時代。しかし心の中にどこか空虚さや不安を持っていた時代。シュトラウスが象徴するのは、こうした爛熟と黄昏だ。
長命を得た彼。ナチス台頭後、帝国音楽院の総裁に就任する。名声を考えれば納得の選出とはいえ、シュトラウスはずっとナチスに否定的だった。息子の妻がユダヤ人、故に孫もユダヤ系。家族を守るための行動だった。
ドイツは戦争に負けた。徹底的に負けた。修業時代を過ごした街も、楽曲を初演した歌劇場も、文化そのものも廃墟となった。
最後の数年間、昔を懐かしむようにモーツァルト風の楽曲を書き、85年の生涯に幕を閉じた。