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個の諸要素
本作は私が特定の個人にモデルとして関心を向け、その姿を立ち上げる様を説明的かつ疑似解剖学的に表した作品である。
物理的に巨大に表された頭部が本作で最初に制作対象として設定した人物である。彼の首から下の具体的な表現と捉えられるは、同じく巨大な右手のみである。全体を構成する事物の角度やアウトライン等により、朧げながらも作品全体で、巨大な頭部を持つ人物の上半身が立ち上がるよう制作されている。
私は特定のモデルを制作する上で、常にそのイメージを私にもたらした第三者、つまりその人物が生前に交友を持った人物や影響関係にあった人物も意識する。本作で構造を作り上げるために作中に登場する小さく表された2名の人物は、そういった人々の表象である。彼らも巨大な顔の持ち主に対し系統付けられた特定の個人なのである。
彼らは構成上、その在り方の副次性を表現するために明確にサイズ差を設け、人体としての破綻を施し、あくまで作品全体の一要素に過ぎないものとすることを試みた。しかし、見ての通り本作ではこの人物たちもある種の雄弁さを獲得しており、 彫刻全体の人物像としての主体も揺らいでいる。
群像的な作品はこれ以前にも存在したが、これ以降の作品では主に彫刻における主体の在処を探る術として用いるようになる。