ある天使の思い出に
H25×W18×D10 cm
photo Ujin Matsuo
ベルク(1885〜1835)はシェーンベルクの弟子だ。シェーンベルクが誰かと言うと、20世紀に音楽を理論的に改革しようとした人物である。語弊を恐れずに言えば歌えるメロディのない、現代音楽然とした音楽の祖である。
シェーンベルクは 幾つかの作品でセンセーションを起こし、自らの理論体系化された作曲法を伝道し、弟子に囲まれ20世紀音楽最大のカリスマの1人となった。しかし、大衆の支持を得ることはなかなか出来なかった。今でも。
そんな中、歌劇で広く成功を収めた弟子がベルクである。彼は師の教えに忠実だった。作品は調べるほど、構造や数字に満ちている。しかし、元来ロマンチストなのだ。掴み難いが妙に退廃的で艶っぽく、ときに旧時代のメロディの破片の様なものが見え隠れする。理論と色気の塩梅が絶妙だ。セリフが付けば感情が剥き出しになる。圧倒的なリアリティ。これは確かに大衆に響く魅力がある。
彼は言葉を伴わない器楽曲では自伝的な作品を多く残した。師や他の弟子たちに捧げられたもの、自らの恋愛を綴ったもの。彼は物語の作曲家だった。
とても可愛がっていた知り合いの娘、マノンが18歳で亡くなった。ベルクは衝撃を受ける。依頼されたまま手付かずになっていた、ヴァイオリン協奏曲をその追悼曲にするべく筆を取った。しかし、作曲中に自らも不調をきたす。愛する者の死へ捧げる曲が自らの遺書になる。ある種の悟りに近い状況下で完成された作品は「ある天使の思い出に」という副題を与えられた。初演を聴くことなくベルクは敗血症で50歳で死んだ。