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家の記憶
本作は東京美術学校(現・東京藝術大学)の教授も務めた彫刻家、平櫛田中(1872~1979)の旧宅で展示するために制作された。私は縁あって平櫛田中を関する展覧会に複数回展示する機会を得ていたが、本作は一連の田中関連企画の総決算として、田中本人と関連付けることが可能なモチーフを選出し構成されている。
全体は平櫛田中が早世した長女を偲んで作った〈姉娘〉(1928)を下地としており、そこに当時のエピソード等を踏まえ要素を加えていった。台座も写真を元に当時の塑像台を模した形となっている。
各々の要素を明確に結びつけ、特定の平櫛田中に基づくイメージを提示するよりは、各部分の散文的な処理によって、多角的で定め難い田中のあり様を示そうとした。