
相互的流動。各々は影、
H20×W40×D20 cm
photo Ujin Matsuo
ドビュッシー(1862〜1918)もラヴェル(1875〜1937)も19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍した。同時代のフランス2大作曲家としてCDにしろ演奏会にしろ、まとめて取り上げられることがとにかく多い。
とはいえ、この2者は全く異なる個性を持っている。
年長のドビュッシーは完全な個人主義者。自己の表現意欲を探求していった結果、既存の形式を次々無効化し独自の世界を築く。
和声(機能和声)や調性感を逸脱し、これまでの西洋音楽の基本原則にメスを入れる。こうして革命児は20世紀以降の音楽の方向性を指し示した始祖となる。
一方ラヴェルは、根本的に古典主義的。一見革新的でも、どこかで形式や秩序を守る。彼は過去の作品から学ぶことの天才。様々な方法論を自分のものとし、巧みに統合する。研磨された作品は元ネタの様なものあっても、それを一切感じさせないオリジナルとなる。いわば彼が生きていた時代までの音楽の終着点を体現する人。
性格も違う。
ドビュッシーは気難しい怠け者。未完作品も多数。色恋に事欠くことなく、彼の浮気の結果自殺未遂まで至った女性も複数。しかしそれが彼のインスピレーションの源となり、現在我々はその作品を享受する。
ラヴェルは小柄だが、スーツの着こなしは洒落ていて、ウィットに富んだジョークで知られた社交界の中心人物。しかし、個人生活では女性の影が一切ない。仕事態度は勤勉で、インスピレーションはもっぱら1人で森を散歩することで得ていた。
同時代に同じ国で同じ空気を共有し、実力も拮抗していた2つの個性。対にされるからこそ各々の特徴も見えてくる。あり得ないほど極端な横顔の差異に及ぶまで、この2人の対比は無限に面白く、私の制作の原動力となった。